八王子車人形 西川古柳座の襲名披露公演を見に行った。車人形は、よく見に行くが、若手人形師の襲名披露とあって、多くのファンが集まった。いわゆる、文楽・人形浄瑠璃であるが、人形遣いが小さな車付きの台(ろくろ車)に座り、一人で人形を操作する。人形の足が、人形遣いの足と直接つながり、足が床から浮いている文楽では表現が難しいであろう人形の足で床をたたく動作が表現できる。また、一人で人形を操作することから、いろいろな工夫がなされてる。

今年はやった、映画の「国宝」ではないが、こうした伝統文化を継承する方々の覚悟が伝わってきたような気がする。人間国宝の方が、お二人、新内と三味線で参加され、圧倒的な迫力に酔いしれた。演目は、「芝浜」と「生写朝顔話」で、古参メンバーが「芝浜」を、襲名メンバーを中心に「生写朝顔話」が演じられた。芝浜は、落語でなじみの話であるが、車人形で見るとまた、違った趣がある。新内の響きが、何とも言えない。「生写朝顔話」は、なかなか複雑な話ながら、思わぬ展開で、新鮮であった。とにかく、人形劇であることを忘れる。特に、家の中と外で高さの違いがある段差を車人形が行き来するのにはちょっとびっくりした。「ガタン」と音がしないのである。
車人形は、頭と右手を中心に操作するので、左手部分は、右手からのリンク機構となり表現が制限される構造となっている。しかし、それを感じさせない、人形のしぐさには驚愕した。
人形を持たせてもらったことがあるが、重い。ろくろ車に座り、上記のリンク機構を含む人形を操作するためには、背筋力がないと、人形がうつむいてしまう。背筋力だけでなく、これはすごい体幹力が必要だと感じた。今回襲名した、若きスターたちが、今後精進されてこの芸を受け継がれ、さらに彼ららしいものにしていくことを願ってやまない。爺の思い、全開である。