2024年11月3日J:COMホール八王子にて初めて公演を見ました.もともと,文楽,浄瑠璃などに興味はあっても,なかなか敷居がたかく,「なんか,面白そうだな」と感じる程度でした.今回,「信太妻 葛の葉二度目の子別れの段」という演目で,陰陽師安倍晴明の誕生奇譚にまつわるものでした.八王子車人形西川古柳座と説経節の会の公演で「説経節」の意味も良くわからないで参加しました.太夫・薩摩花太夫さんの語り,京屋巧さんの三味線と相まって,西川古柳座の車人形は大変感動的でした.車人形とは,自由に動く車の付いた椅子に人形の操作者が座り,人形を一人で操るもので,操作者の足と人形の足がつながっているので,人形が移動するときに,操作者と人形が大変面白い動きをします.こうした芸能が引き継がれて現在に及んでいることは,すばらしいことだと感動いたしました.
さて,演目のストーリーなのですが,どうも,はじめて聞いただけではよくわかりませんでした.安倍晴明のお父さんの保名が白い狐がいじめられているのを助けるのですが,自分も傷を負ってしまいます.その介抱をしてくれるのが助けてもらった狐が化けた葛の葉姫です.保名と葛の葉姫は,夫婦となり子供である童子丸を生みます.この子が,安倍晴明です.そののち,狐であることが分かってしまい,保名や童子丸と一緒に住めなくなり,山に帰っていきます.その時,子供に残す一首が,「恋しくば 尋ね来て見よ 和泉なる信太の森の うらみ葛の葉」です.公演の舞台は,この一首に従って,保名と童子丸が信太の森に行き,母を探す場面なのです.ここ迄のストーリーだと非常に明快なのですが,公演では,童子丸を連れているのが「葛の葉」という女性で,保名と一緒に探しているのです.なぜ,人間「葛の葉」が「葛の葉に化けた白狐」を探しているのかがわかりませんでした.また,白狐が「葛の葉」に化けているとき,本当の人間「葛の葉」はどこに行っていたのか? などいろいろ不可解で理解できないことがでてきました.
そこで,帰ってから,いろいろ調べてみるといろいろ凄い話に繋がっていることが少しずつわかってきました.歌舞伎演目の「芦屋道満大内鑑~葛の葉」と話がつながっていることや「葛の葉姫」と「葛の葉」が一人二役の見せ場があることもわかってきました.また,「うらみ葛の葉」も係言葉になっていて,むかしは,葛の葉を手紙代わりに使っていたとのこと.葉の裏に字をなぞると,紙のように字が浮き出てくるらしい.つまり,葉っぱの裏を見ていけば,どこかにメッセージがあるかもしれないという意味にもなっているらしい.なんか,すごく深くて,底なし沼です.
そもそも,保名が白狐を助けるとき,なぜ,自分もけがをするのかが分からなかったのですが,良く調べてみると,石川悪衛門の奥さんが病気になり,兄の芦屋道満から信太の森にいる白狐の肝を与えれば治るといわれて,白狐をとらえようとしたということが分かりました.この場合,石川悪衛門が保名を傷つけたことになります.ただ,いろいろ調べてみると,それとは違う,伝説なども出てきて,保名と白狐の出会いの関係が様々でした.とにかく,すごくヒットした歌舞伎演目だと分かりました.まだまだ奥が深そうです.しかし,車人形から広がる未知なる世界は,なかなか魅力的であります.妻は,説経節語りのすっかりファンになってしまいました.
八王子指定文化財芸能団体協議会事務局・当日配布されたプログラム
“八王子車人形” への2件のフィードバック
私も観ました!会場は不思議な雰囲気につつまれていました!獅子舞いも心にひびきました!
まるやまさま コメントありがとうございます.八王子は,貴重な文化が残る町なんですね.色々勉強してみます.